母は7年程前に、ほんの些細な出来事から鬱を発症した。

ちょうど父のレビー発症の一年後くらいである。
当時両親は二人暮らしで、父の異変にも気付いては居なかった。
滅多に電話等かけてくる事の無かった父から「お母さんが変なんだ」と電話が来て、私が駆けつけた時には何日も食べず眠らず踞り「死にたい」と泣く母がいた。

その後、父のレビーの進行(当時は病名すら判明していなかった)等で、母一人では介護は無理と医師から告げられ私たち夫婦と同居することになった。

その後も感情をコントロールできない母は、躁状態、鬱状態を繰り返した。
昨年から週に一度だがデイサービスに行くようになり、かなり明るく元気にはなった。
しかし、物忘れはかなり進んではいる。
長谷川式のテストも脳の画像にも血流の悪さ以外は異常は認められない。
鬱から引き起こされる一過性の認知症状と医師は言うが……。



ま、若い頃からちょっと変わった性格の母である。
歳を重ねても根本的なところは変わらない。



父が先日からオシッコの出が悪くなった。
浮腫が酷かった頃に摂取水分量を減らされたまま今日に至るので、急に上がって来た気温のせいもあり少々脱水気味な事もある。
昨日の訪看時に往診の看護士とも連絡して200mlまで増やして良いことになった。

そして今朝、ちょっと熱が上がった。

途端に、母が…始まった。


「私、思うの」
「きっと、お父さんはながくないと思うよ」
「もう、ながくないんだよ」
「あんたもそう思うでしょ」



私だけにそっと言うのならまだ我慢できる。
母は父の前でも平気で言い放つ。
私の口からどんな言葉を期待しているのか?
最初は不安から「そんな事はないよ。大丈夫」と言って欲しいのかと思ったのだが違ったようだ。
「大丈夫だよ」と言ったら…


「だって、熱があるんでしょ」
「呼んでも返事しないじゃない」
「もうながくないんだよ」

と……。


私の方が変になりそうだ。



父は熱も下がり顔色も良く、反応はいまいちですが特別な変化はありません。


そして母は…父の事を気にかける様子も無く、笑顔でデイに出かけてゆきました。


私は今これを書きながら、すごぉぉぉーく落ち込んでいます。